【シュトーレン】ドラマティックな由来と歴史(前編)

Ryo

元和菓子職人でグルメ食品バイヤーが、実際に食べて本音でご紹介する「プロからの口コミ」ブログです。

日本でもすっかり新定番として有名になった、クリスマスシーズンのお菓子シュトーレン。しっとりとしたおいしさが魅力のお菓子ですが、もともとどどんなお菓子だったのか、ご存じですか?

今回のブログではシュトーレンが波乱万丈な歴史のなかで、どのようにおいしいお菓子になったのかを探ります。

目次

「シュトーレン」とはどんなお菓子?

クリスマスシーズンに欠かせない菓子、シュトーレン

生地にドライフルーツやナッツ、スパイスやマジパンを練りこんで焼き、粉砂糖をたっぷりとかけた楕円形のケーキです。ドイツのドレスデン産が有名で、クリスマスシーズンによく食べられています。別ページに、簡単にできるシュトーレンのアレンジレシピもご紹介していますので、ご活用ください。

シュトーレンの形はエルツ山地から?

シュトーレンの起源は諸説ありますが、もともとは大昔、新年や収穫を祝う菓子として作られていたようです。
”stollen” はドイツ語で「棒」や「坑道」を意味し、素朴な細長い形の由来には、いくつかの説があります。

①キリストのおくるみ、ゆりかごの形
②東方三博士の杖
③神父の袈裟(けさ)
④銀鉱山として知られるエルツ山地の坑道

どれも言われてみるとうなずける理由。みなさんはどれがしっくりきますか?

なお、”stollen” のドイツ語読みに近い表記は「シュトレン」なのですが、ここでは現在日本で親しまれている名称「シュトーレン」で、お話を進めます。

そっけないパンのようなケーキだった 最初期のシュトーレン

東方三博士の礼拝(キリストの誕生)

記録が残る15世紀ごろには、シュトーレンはクリスマス前の「アドベント」の期間に食べられていたものでした。
このころのシュトーレンは教会会議によって定められていたレシピ通り、小麦粉、イースト、油、水で作られていて、そっけない味だったようです。もっとも、それには理由があります。

いまの日本で「アドベント」といえば、毎日お菓子やおもちゃが出てくる「アドベントカレンダー」などで知られ、クリスマスが待ち遠しい楽しい期間のようなイメージがあります。
しかし本来の「アドベント」は5世紀から続く、キリストの誕生と再生を前にした断食と悔い改めの期間でした。

長い歴史のあいだに断食がなくなるなど多少の変更がありましたが、大昔からこの4週間は大事な期間。盛大なお祭りやお祝い事だけではなく、肉や卵、乳製品を食べることをも控える期間だったのです。

この慣習からアドベント期間中に食べられていたもともとのシュトーレンも、バターやレモンピールの砂糖漬け、アーモンドのようなものは何も入っておらず、味わいも香りも乏しいものが作られていたようです。

 「バターを使わせてください!」

ドイツ フライブルク大聖堂

1450年、のちにザクセン選帝侯となるエルンストとその兄弟のアルブレヒトが、教皇ニコラウス5世にバター使用の請願を出しました。しかしなかなか認可は得られず、40年以上あとの教皇イノセンス8世の時代になってやっと、バターの使用を許可する有名な「バター書簡」が教皇から送られました。

本来この書簡にはザクセン選帝侯領の宮廷出入りの職人だけがバターを使ってよいといった内容が書かれていたのですが、宮廷のあったドレスデンのパン屋さんはわれさきに、バターの入った美味しいシュトーレンを作るようになりました。ただし、上述した名前の由来説④でご紹介した銀鉱山の近郊に位置する、フライブルク大聖堂建設のための「お布施」を支払わなければなかったといわれています。

現在のようにドライフルーツやアーモンドが入るようになったのはいつごろなのか、実ははっきりしていません。ですが、それらが貿易で手に入るようになりつつも貴重品であったころから代々、職人たちが工夫を重ねてより美味しいシュトーレンに改良してきたのでしょう。

美味しいシュトーレンを食べたいのは昔の人も同じと想像すると、少し親近感がわきますね。

まとめ

一見地味にも見えるシュトーレンですが、長い歴史があるからこそ、複雑で深い味わいのお菓子になったのでしょう。

後半編では地味な印象が一変する!?インパクト絶大なシュトーレンが登場します。下のボタンからすぐに見られますので、あわせてごらんください。

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