グルメ食品バイヤーのRyoです。実際に食べて家族にもすすめたい食品をご紹介する「プロの口コミ」ブログを書いています。
ニシンは日本では「春告げ魚」とも呼ばれ、おそばでおなじみの甘露煮や子どものカズノコ、子持ち昆布などが一般的ですが、オランダでは水揚げしたばかりの新鮮な状態で、塩漬けにしたものが大人気です。今回はオランダの国民食であるニシンの塩漬けをご紹介します。
オランダの国民食ニシンの魅力
オランダの国民食、ニシン。オランダではハーリングと呼ばれる北海の比較的小ぶりのニシンが昔からたくさん獲れました。味の良さと国の財政に大きく貢献してきたこともあって、オランダ人にとってニシンは特別な魚です。
その中でも特に、初夏に出回る産卵直前の初ものは「マッチェス(小さなバージン)」と呼ばれる旬の珍味です。一年のうちの限られた時期だけ獲れるプレミアム感と、産卵前の栄養を十分に蓄えた旨味たっぷりの身を楽しむために、オランダでは毎年初夏になると、各地でニシンの塩漬け露店が出るお祭りが開催され、まちわびた人たちで賑わいます。
北海の長く厳しい冬を乗り越え暖かい春になると、ニシンは産卵にそなえてプランクトンを大量に食べるようになります。栄養を身体に貯めこんだマッチェスは、ニシンらしいさっぱりとした口当たりと、肉厚で柔らかな身、マグロのトロを思わせるとろけるような脂ののりになります。その身を軽く塩漬けにすることで、うまみをさらに凝縮させたマッチェス。オランダでの人気もうなずけるおいしさです。
栄養をたっぷり摂った産卵前のニシンの甘みには驚かされます!
オランダ各地で行われる「ニシン祭り」
オランダ人の初夏の楽しみは初物のニシンを食べるお祭り。
そのなかでも有名なのが、マリンスポーツと白く長いビーチでリゾート地としても有名なスフェベニンフェン(Scheveningen)で毎年開催される「フラフヘチェスダフ(Vlaggetjesdag)」 です。お祭りの日にはシーフードをはじめとする露店がたちならび、魚の解体ショー、民族衣装でのダンスなどで盛り上がります。
素晴らしいホテルが立ち並ぶ有名リゾート地のScheveningen。
お祭りでのニシンの食べ方
ニシン祭りの屋台でニシンを頼むと、たこ焼きを乗せるようなトレーに半身をまるごと乗せて出してくれます。軽く塩漬けされており、添え物はみじん切りにした玉ねぎやピクルス。オランダ現地のかたによると、しっぽのほうをつかんで持ち上げ、下からぱくついていくのが正しい?食べ方だとか。
Ryoも試してみましたが、口の中がニシンでいっぱいになってかなり食べにくい!下から食べていくのは「パン食い競争」くらいしか経験がないので悪戦苦闘です。
もちろん、屋台の人にお願いすればふつうに切って出してくれるので心配ご無用。甘みのあるニシンの身とピリッとした玉ねぎがよく合うまさに旬の味です。
仕事帰りにもニシンを一口
各地のニシン祭りとは別に、季節になると普段の街中でもマッチェスの屋台が登場します。お祭りの時と同じようにトレーに乗せて出されるマッチェスを気軽にぱくり。仕事帰りやお出かけの時、小腹が空いたらスナックのように気軽に食べます。
国王陛下が召し上がる至高のニシン「クラウンマッチェス」
ウィレム・アレキサンダー国王陛下はお忍びで長年KLMのパイロットをされていたことでも有名です。
一般市民が愛するニシン、マッチェスの最高峰ともいえるのが、オランダ国王陛下が召し上がる「クラウンマッチェス」。
Y.デン・ダルク&ゾーネン社は、オランダで唯一の王室御用達メーカー。王室にふさわしい、品質にこだわりぬいた塩漬けニシンを製造しています。
産卵前の脂の乗り切ったマッチェスを使用するため、水揚げされる期間を6月の数週間に限定。新鮮なマッチェスを二度塩漬けにします。燻製タイプもあり、こちらは王室庭園に生えているブナの木から作った燻製チップでいぶします。化学調味料はもちろん使用していない、とろけるような自然の恵みを味わえる逸品です。
脂の甘み、柔らかで食べやすい身にニシンのイメージが変わるかも!?
クラウンマッチェスの食べ方
マッチェスにはイタリアのパンがおすすめ
クラウンマッチェスは塩漬けなので、30分ほど水を入れ替えながら塩抜きをします。一般にシーフードの塩抜きは面倒なイメージがありますが、30分程度だと他の食材を用意している間に完了するので、実際にはそんなに手間がかかるイメージはありません。燻製タイプは低塩仕上げなので、塩抜きなしで大丈夫の手軽さです。
身をキッチンペーパーなどで軽くふいたら、食べやすい大きさにニシンをスライスして、玉ねぎのスライスやみじん切りを添えてそのままいただくのが一般的です。 また、マリネやピクルスの酸味ともよくあいます。和風にさっぱりといただきたいときは、生姜と葱を乗せるのもおすすめ。お酒のおつまみとしてもよく合います。
そのままいただくのはもちろん、パンにはさんでフイッシュバーガーもよいものです。パンはできればあっさりとしたイタリアのパンがおすすめ。クセのない、小麦本来のほのかな甘みを楽しめるイタリア製パンが、素朴な自然のおいしさを持つクラウンマッチェスを引き立てる、シンプルで味わい深いレシピです。
マッチェスはお魚をふだん食べないかたにもおすすめ
これまでの経験では、クラウンマッチェスをおすすめすると皆さん「予想以上に食べやすくておいしかった!」と喜んでくださいます。火を使わなくてもよく、身も柔らかいので特にご年配にも好評です。
見た目が地味でも実力派のクラウンマッチェスは、普段お魚を召し上がらない方にもお試しいただきたい、旨味たっぷりのニシンです。
今回はオランダのニシン、マッチェスについてお伝えしました。ニシン選びやオランダ観光の参考にしていただければ幸いです。今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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